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人災派遣のフレイムアップ 第7話 『壱番街サーベイヤー』 21

 研究棟を出たおれ達は、キャンバスを大きく回り込んで、公園と一体化している遊歩道を歩いていた。ちょうど建物の裏口に沿って移動する形となり、にぎやかなキャンパスの裏の顔、ゴミの山や廃棄された看板がさらけだされている。
 研究棟と倉庫は、キャンバスを挟んで丁度反対側。向かう道は幾通りもあった。
 その中で最も人目につかず、それで居てそこそこ道幅の広い道を選んだのは、同行者達に対するおれなりの配慮というものであった。
「……気づいたの?」
 歩きながらさりげなく肩をよせ、ささやく真凛。おれも速度を落とさぬまま、肩をすくめて鷹揚に応じた。
「まさか。おれに気配なんて読み取れるわけないだろ」
「それじゃあ」
 気配は読めなくても、相手の考えなら読み取れる。
「『鍵』の在処はつかめた。都内で人目を気にせず襲いかかれるチャンスはそうない。事務所に逃げ込まれてしまえばアウト。多少のリスクを侵してもここは打って出るべき――そんなところだろう?」
 振り返らずに後ろへ声を放る。程なく街路樹からするりと、スーツ姿の油断ならない美女が滑り出た。
「ドーモです、亘理サン。マタまた会えて嬉しいなのデス」
「どうも、美玲さん。一応気配読んでみようと思ったんですがねえ。まったく感じ取れませんでしたよ」
「貴女は、空港の……ッ」
『ご機嫌麗しゅう皇女殿下。ほんの一日ぶりですけども』
 艶やかに笑う美女。その視線が捉えるは銀髪の皇女。素早く真凛が割って入り壁となる。
「ってことは、颯真も来てるってことだよね!」
「サテ、どうデショ?今日はお休みカモですよ?」
 あたりを見回す。街路樹、キャンパスの建物、金網、植え込み、街灯。だが美女とつるんでいるはずの獰猛な青年の姿はない。
「前回はアナタタチ待ち伏せデシタからね。今度は少し焦らシタイのことよ」
 一定の距離を保ったままの美玲さん。真凛が突撃して皇女の護衛ががら空きになったところに颯真が不意打ちをかけてきたら厄介ではある。あるのだが。
 おれはしばらく考えて――真凛にアイコンタクトを送る。頷く真凛。
「そうかそうかあ。いやはや参った、雷名轟かす若き侠客、『朝天吼』も所詮は横浜ローカル。東京の裏社会に君臨する『竜劉殺し』と拳を交えるのを避けるは賢明、これぞまさしく書生の――っとあっぶね!!」
 中空に放ったおれの挑発は、上空に茂る銀杏の木から瀑布のように落ちかかったブ厚い斧刃脚によって遮られた。当たって居ないはずなのに、頭髪が数本舞い、額の皮が薄く裂ける。
「誰が誰から逃げたと?」
 斧刃脚、右脚を宙にまっすぐ突き出し、左脚を深く折り曲げた片足立ちの体勢のまま、毫も構えを崩さず青年……劉颯真は冷たく言い放った。
「ふふん、まだまだだなあ颯真、せっかく美玲さんが不意打ちの陣を敷いたってのに、肝心のオマエが安い挑発一つで算を乱してどうする」
 おれは軽口を弄しつつ、真凛の代わりに皇女のガードに。冷静さを奪うべくなおも挑発を繰り返そうとしたが……叶わなかった。目の前の青年の放つ、凍てつく殺気によって。
「……なに、貴様相手に不意打ちなど最初から成功するとは思ってはおらん。美玲の顔を立てたまでのこと」
 ぎりぎり、と音が聞こえる。幻聴ではない。呼吸により練り上げられた内勁に応じ、奴の深層部の筋肉が 静かに圧縮され力をため込んでいるのだ。――さながら、重い橋脚を吊り下げるスプリングのように。
「策は美玲がどうとでも取り繕う。我が為すべき事は――」
 あ、やべぇな。おれは内心舌打ちした。挑発が効果を持つのは迷いを持つ奴、選択肢を持つ奴だ。最初からやるべき事を一つと決めている者には――
「真凛!」
 おれの声なぞ、とうに戦闘モードに入っている女子高生の耳には届かない。
「貴様と雌雄を決する事よ!!」
 バネが弾けた。
 昨夜の『南山大王』と同様に力強く、だがそれよりも遙かに静かに、氷上を滑るように。

 四征拳六十五手の四十一、『揚水如竜(かいしょうはりゅうのごとく)』。
 
 三十七手より先の四征拳は、その姿をいささか変える。
 それまでは『沈墜勁』―ーすなわち鬼すら踏み砕く大地の気、その反動として衝き上がる天の気を産み出し、炸裂させる技法を主とする。
 だがそれより先は次なる段階。
 膨大な天の気を炸裂させるのではなく、己が身に纏いて東西南北縦横自在に拳を、腿を、靠を叩き付ける神速の身体運用――すなわち『十字勁』。

 劉颯真はその位に達したのだ。

「……くっ……」

 真凛は身構える。だが。

 銃弾を避ける回避が、『南山大王』の超音速の突撃すら斬って捨てたカウンターが間に合わない。
 否、応じきれない(・・・・・・・)。それは単純なベクトルではない。神速でありながら意思を持ち、着弾のその瞬間まで真凛を狙い、補正し、護りを貫きかいくぐる魔性の拳。

 まるで迫撃砲で打ち出された水銀のごとく。
 異常な疾さ、重さ、滑らかさを伴う崩拳。

 轟音。

 おれは信じられない光景を見た。胸部に致命の打撃を叩き込まれ、宙を吹き飛ぶ七瀬真凛の姿を。
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|コメント(-) |トラックバック(-) | 2016年10月28日 (金)00時05分