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人災派遣のフレイムアップ 第3話 『中央道カーチェイサー』 3

 社長が死神に愛想を尽かされて現職にカムバックしてからと言うもの、『あかつき』の編集部内は宗教弾圧真っ盛りの中世さながらだったそうだ。
 まず最初に行われたのが、主要連載マンガ陣の打ち切りである。人気の無くなったマンガのストーリーが急展開したと思ったら三、四話後に打ち切り、というパターンはどの雑誌でも良くある話だ。だが、『あかつき』では人気の主力連載でこれが唐突に行われたのである。
 困惑する読者を尻目に次に行われたのが、残った人気マンガの他誌への移籍。ホーリック社は『あかつき』の他に、四ヶ月に一回刊行する季刊『あかつきSEASON』を持っている。本来は新人の読み切りや『あかつき』本誌連載の外伝を掲載したりする、いわば二軍的役割の雑誌だったのだが、主力連載がこの『SEASON』にいきなり移管されたのである。当然これらの処置に連載のファンと、そして当の作家達は怒り狂った。だが、自らの信念を以って進む社長にとってはそんなものは打破すべき有害図書の怨嗟に過ぎず、抗議の声は踏みつぶされ、ますます『あかつき』から『あかつきマンガ』は排除されていったのだった。
 そして空いた穴を埋めるべく大量に投入されたのが、円熟したベテラン作家による一昔、いや、三昔前の『清く正しい』王道少年漫画の群れだった。そりゃもうスポ根、青春、熱血、努力、勝利、下手すりゃ愛国なんて言葉も大真面目に飛び出すような連載陣。それはまさに、創刊当時の『あかつき』の復刻だった。
「当然、私達編集や作家も大いに困惑したのですが、一番の被害者は読者でした」
 そりゃそうだ。繊細な美少女や格好良い美青年の活躍を楽しみにページをめくった読者が、劇画調のオッサンがぎっしり詰まったコマを目にしたらそりゃ詐欺だと思うだろう。結果として、『あかつき』は十年に渡って開拓して来た読者を多く失う事になった。
 ワンマン社長の独裁が吹き荒れる中、この十年を築き上げてきたマンガ家達、そしてかつての若手にして今の中堅どころの編集者達の気持ちは到底収まるものではなかった。彼等はやがて一つの決断を行う。――我々が育ててきたこの『あかつきマンガ』の芽を、あの社長の独善で潰させるわけにはいかない、と。
 そして叛乱が始まった。
 当時の編集長が資金を調達し、出版社『ミッドテラス』を設立。そして現『あかつき』の主要スタッフと、『SEASON』に追いやられていた作家陣を引きつれ集団でホーリック社を離脱したのである。そしてミッドテラス社は月刊誌『ルシフェル』を設立。『あかつき』で辛酸を舐めた連載陣を、一部タイトル名を変えた程度でほとんどそのまま復活させたのだ。
 もともとホーリックが『あかつき』を創刊し、今また強引な方針転換を推し進めたのは、社長の独善的とも言える思い込みによるものである。だが、――いや、だからこそか――社員とマンガ家の大量離脱という裏切り行為は事態は社長にとって許せるものではなかったようだ。例えそれが『あかつき』から彼の嫌う異分子がいなくなる事を意味していたとしても。
 そしてホーリック社はミッドテラス社を提訴。『ルシフェル』における連載陣はすべて『あかつき』の連載の続編であり、明確な著作権違反だと指摘。対するミッドテラス社はホーリック社の横暴な振る舞いを訴え、また、自社の連載陣はあくまで同一作者の別の連載である、と主張し、作品の著作権や作家の所属、はたまた著作権の解釈そのものを巡って、両社は激しく争う事になった。半年以上経過した今もこの騒動は法廷で継続しており、時々テレビや新聞を賑わせている。
 
 そして、半年以上継続しているこの『ルシフェル事変』において、当初から一貫して一番の台風の目だったのが、『あかつき』のトップ人気マンガ、『えるみかスクランブル』である。
 主要の連載の多くが打ち切られ、また『SEASON』に移された時も、その後も、一番人気の『えるみか』だけは手を付けられる事が無かった。理由は簡潔。稼ぐ金が大きすぎて、ワンマン社長と言えども迂闊に手が出せなかったのである。数度のアニメ化、ドラマCD化、映画化もなされ、フィギュア等のグッズ類が上げる利益は莫大。『あかつき』は知らなくても『えるみか』は知っている、という人々が多数居るこの御時世だ。『えるみか』の連載中止はそのまま『あかつき』の致命傷に、いや、もはや母体であるホーリック社の屋台骨にまで大きな損害を与えかねないものとなっていたのである。
 反面、『ルシフェル』としては、『えるみか』とその作者『瑞浪 紀代人(ミズナミ キヨト)』は何としてでも自社側に引き抜いておきたいカードだった。人気連載をまとめて引き抜いたミッドテラス社も、お家騒動のゴタゴタで多くの読者の離反を招いており、決して安穏と出来る状況ではなかったのである。いや、もっと辛辣に言ってしまえば、『えるみか』という主力作品なしに単品で勝負出来るだけの連載は無かった、と解釈する事も出来る。ミッドテラス社は設立当時から瑞浪氏に対して強い勧誘を続けていたが、先の理由によりホーリック社もこれだけは例外と断固として勧誘を跳ねつける。やがて、ミッドテラスの勧誘とそれに対するホーリックの妨害は次第に強引、強硬なものとなり、両社に挟まれた形になった瑞浪氏は執筆以外のストレスに体調を崩すようになっていった。
 
 そして数ヶ月が経過したころ。
 『ルシフェル事変』は、著作権の正当性や各作家の意志という法律やモラルの問題から、次第に『瑞浪紀代人はどちらで連載をすべきか』という、きわめて生臭い一点に集約していったのである。片や、専制君主の意向で切り捨てたいのに切り捨てる事が出来ない『あかつき』側と、喉から手が出るほど切実に欲しいのに、『あかつき』で連載されている限り手出しが出来ない『ルシフェル』。決め手を欠く両社が表と裏の双方の世界で暗闘を繰り広げて行くうちに、事態は深刻さを増す一方だった。
 世に少年漫画雑誌は『あかつき』と『ルシフェル』だけに在らず。アニメ化される人気マンガは『えるみか』だけに在らず。当然と言えば当然のことであるが、両社が終わらぬいさかいを繰り返す内に、奪い合いをしているはずの読者達はどんどん他誌へと流れていったのである。
 ゴタゴタが続く中、当の『えるみか』も”作者都合により”休載がちになっており、殊に現在は、41話が掲載されてから既に三ヶ月連載がストップしていた。これらの裏事情はとっくの昔にあまさずネット経由でリークされており、公式サイトやファンによるコミュニティは日々炎上。読者の怒りは頂点に達していた。
 
 このままでは共倒れ。
 
 その認識を持つに到った双方は、極めて合理的な問題解決方法を選択した。すなわち――ケーキの取り合いになったらジャンケンで勝負を決める。これと同様に、企業間の揉め事になったら、『異能力者達の競争』で勝負を決める。――ここ最近、企業間の裏社会で急速に広まりつつある方法を。
カテゴリー:_小説3話 | タグ:
|コメント(-) |トラックバック(-) | 2016年02月08日 (月)00時47分
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