猫又公司


小説・TPRG系サークル『猫又公司』のウェブサイトです。

小説:人災派遣のフレイムアップ

人災派遣RPG

人災派遣RPG

リプレイ 『人材派遣のCCC』

CCC

ドラマCD&同人誌

プロフィール

管理人:紫電改
アイコン
小説、TRPG、サウンドノベルを中心に創作活動を行う同人サークル『猫又公司』のWebサイトです。作成した小説、TRPGリプレイ、ドラマCDなどの情報を掲載しております。
twitter@Shidenkai_79



ぴあすねっとNAVI様

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
カテゴリー:スポンサー広告 | タグ:
|コメント(-) |トラックバック(-) | --年--月--日 (--)--時--分

人災派遣のフレイムアップ 第7話 『壱番街サーベイヤー』 16-b

「亘理さん、彼らはいったい、誰ですか……?」
 皇女の息が僅かに上がっている。おれはそれに年長者の余裕を持って、
「ああ、アーバン、ジョブ、ネットワーク、つってね……!」
 答えたつもりだったのだが、どうも呼吸器系は過剰労働に文句を言いたい模様。こないだの山中走破といい、やっぱり基礎訓練って大事なんだなァ。
「……お手軽な、兵隊調達、手段さ!」
 アーバンジョブネットワーク。近頃口コミで広がっている、暴力団にも所属できない程度の中途半端なチンピラ、タチの悪い不良学生、借金を抱えた社会人……裏の世界に「片足とは言わないが半歩踏み出しているような」しょうもない連中を対象にしたSNSだ。今日では男女の出会いもお手軽なバイト探しもSNS上で行われるが、こと裏の世界もそれは例外ではない。ヤバくても割のいいバイトを求める連中がアドレスを登録しておき、そこにヤバい仕事をしたいが自分の手は汚したくない連中が携帯のメール一本で依頼を……例えば「銀髪の女を攫ってこい」とでも持ちかければ、即座に私兵集団を作り上げる事が出来るといういわけだ。ちなみに報酬は駅前のコインロッカーの位置と暗証番号という形で支払われ、アドレスを辿っても依頼人に辿り着くことは不可能という寸法。ってな事を解説してたら袋小路である。
「追い込んだぞ!行き止まりだ!」
「手こずらせやがって、ぶっ殺してやるからなガキが!」
 はん、どうせ新宿あたりから出張ってきた連中だろうが、こちとらホームだ。安い昼飯を食わせてくれる店を探して日々街を彷徨ってる学生ナメんなよ?行き止まり近くの中華料理屋のドアを無造作にオープン。
「ちいっす大将、ちょっと通りまっす!」
「あの、すみません、お邪魔します……」
 目を丸くする店長に目で詫びながら店内を突っ切る。この店は確か旧いビルのフロアを間仕切りして四つの店舗にしたものだから、確か奥で一杯飲み屋とつながっていて、そこを抜ければ――
「抜けた!」
 おれの叫びに、早上がりのサラリーマン達がぎょっとした視線を向ける。そう、おれ達は今、一杯飲み屋ののれんをくぐって、事務所の裏口へと続く通りへと抜け出ていたのだった。あとはここを直線ダッシュすれば、
「逃がすかよオラァ!女をつれてきゃ十万円、テメェは全殺しだ!」
 どやどやと店を突っ切り追いかけてくるチンピラ共。あああご主人すみません。今度メンツ集めてここで飲み会させてもらいますんで。
「つうかお前ら、十万で誘拐罪を背負うつもりかよ」
 言っておくが社会的信用はいざ失ってみると取り戻すのに十万や百万ではきかないんだぞ、これだから本当の意味で頭の悪い連中は――などと思考を逸らしたのがいけなかったのかも知れない。次の瞬間、おれは足をもつらせ盛大にすっころんでいた。
「大丈夫ですかっ!?」
「立ち止まるなっ!」
 ああもう泣きそう。怪我ならともかく、運動不足で足がつったのである。いざ一般人が映画のようなシチュエーションに巻き込まれても、ヒーローのようには行動出来ないという見本になってしまった。
「早く行けっ!」
「でも――」
 ここでファリスが躊躇したのは、判断を誤ったのではなく、迷ったからだ。己が標的という事は彼女も判っている。だが散々挑発されて頭に血が上った連中が、おれを無傷でスルーするはずはなかった。
「気にすんな、給料のうちさ」
 まあ腕と前歯くらいは仕方ない。
 そう、腹は括ったつもりだったのだが。
「……だから、行けってのに」
 皇女は、踵を返していた。紫水晶の瞳がおれを見つめる。桜色の唇が微かに動き、声なき声でルーナライナの言葉を紡いだ。
 ”アルク”と。
 そして腕を取って立ち上がらせる。
「……ごめんなさい」
 時間としてはわずか。だが、チンピラ達がおれ達に追いつくには十分な時間だった。背後から風。とっさに皇女を庇う。振り返りざまに顔面に一発いいのを貰った。
「……っ痛ぅ」
 視界がぶれる。口の肉が歯に当たって裂けた。こりゃしばらく口内炎は確定だ。両腕を上げてなんとか二発目をブロック。だがガードが上がったところにボディ。今度は入った。腕の隙間から怒り狂ったチンピラの顔が覗く。よく見れば最初におれが顔面パンチを入れた奴だ。嘔吐感をこらえる。口先三寸も通用しそうにない。あーもう。ここで玉砕するっきゃねえかな!
 
「――おまたせっ!!」
 その声は頭上から聞こえた。
 後ろから助走をつけて跳躍。おれの頭を台にして跳び箱の容量でもう一段己の身を引き上げ空中で一回転――そしてその勢いを微塵も殺さず、我がアシスタント七瀬真凛は鉞(まさかり)のように踵を振り下ろした。
「はぎゃっ!?」
 異様に小気味の良い破裂音。助走と落下と回転の勢いを全部乗せた踵がチンピラの鎖骨を容赦なくへし折ったのだ。しかもそのまま体勢を崩すことなく、苦悶に反り返った胸を蹴って真横に跳躍。後続のチンピラ……おれが電撃をかました長髪ピアスに襲いかかる。空中から無造作に左手で長髪、右手でピアスをひっつかみ、そのまま背骨を軸として全身の筋肉をうねらせ、ぐるんっと一回転した。
「うっわ」
 おれは思わず声を漏らしてしまった。長髪とピアスをハンドル代わりにされて首を捻られ、ちょっと言及できないほど凄惨な状態になったチンピラ二号が顔を覆って悶絶する。残心しつつバックステップ、おれ達を背後にかばうその様はまさしくヒーローのそれであった。
「なんだテメェ!?」
「ガキか?今何しやがった?」
 後続のチンピラ達が呆気に取られ、足を止める。その一瞬、魔法の杖のように伸びた真凛のつま先がさらに一人の鳩尾を蹴込んでいた。これで三人。
「集団戦?いいよ」
 ぞっとするほど冷たい声。この娘の本質、刃物じみた美貌が垣間見える。
「そういうのは得意だから」
「真凛さん!!」
「遅くなりましたファリスさん!もう大丈夫ですよ!」
「もう腹痛はよくなったのか?」
「おかげさまで!休んだあと御礼言って一度事務所に戻ったんだよ。そしたらあんた達が来たから――」
「ああ。それでパンツも履き替えてたのか」
「…………な」
 うん、まあなんだ。いくら色気よりも食い気とは言え、スカート履いて飛んだり跳ねたりは、ちょっとな――って、
「痛ッてえじゃねぇか!?普通顔面蹴るか?」
 さっきのパンチよりよっぽど痛ぇぞ!?
「うっさいバカ!普通助けてもらってその台詞はないでしょ!?バカでしょアンタ!?あのまま死んでればよかったのに!バカ!」
「おいお前今バカって三回言いやがっただろ?」
「亘理さん、さすがに今のはどうかと」
「え………まずかったかな?」
「ルーナライナでしたらその場で射殺されても無罪判決のレベルです」
「……ま、まあそれよりアレだ。真凛、そいつらをやっつけてしまえ!」
 自分がダメな悪の幹部になった気がする。四天王最弱とかそういう奴。
「……あとできっちり話しよっか」
 猛獣めいた視線の女子高生。小娘一人、だが異様に喧嘩慣れしたその雰囲気と、何より三人を瞬殺してのけた技量。チンピラ達は明らかにひるんだ様子だった。

『あらあら、これは良くない状況ですわね』
 胸の下で腕を組んだ美玲が言う。暗闇を見通す彼女の視界の中では、七瀬真凛に突っかかっていった与太者達が、ほとんど鎧袖一触の状態で次々と戦闘不能に追い込まれている。
『当然だ。小銭をばらまいて雑魚を集めたところで所詮は雑魚。戦闘要員のエージェントが出てくればそれで終わり。自明の事だ』
 そう言って颯真が横目でビトールを睨んだのには当然、無断行動への非難もあるが――
『まさかこれで終わりか、とでも思っているのだろう?』
 陽が殆ど沈み、あたりを覆い尽くす夜の帳の向こうから、ビトールの声が響いた。
『違うのか?』
『当然、終わりではない。与太者どもをかき集めてけしかける程度ならば子供でも思いつく方法だ。本番はこれからよ』
 闇の中、その瞳のみが異様なぎらつきを放つ。金色の輝きの中で、瞳孔が縦に裂け、そして拡がった。筋肉質の大男の輪郭が黄昏ににじみ、ぼやける。陽炎のようにゆらいだそれは、やがて二足歩行のままに、全身の毛を炎のように逆立てた異形のけだもののそれとなった。
 闇の中、”それ”は己が歯を食いしばり、そのまま大きく呼気を吐きだした。口腔内で一度せき止められた呼気が圧をかけられ歯と歯の隙間から幾条も吹き出す――朦々たる黒煙となって。
『――”ルーナライナとトウキョウとでは条件が異なる?”』
 再び男の姿がかき消える。夜の闇よりなお暗い、光を呑む靄によって。
『――”兵隊もいないのに?”――いかにも人間が口にしそうな言い訳よな』
 しばらく黒い靄の中に眼を凝らしていた美玲が、やがて得心がいったように組んでいた腕を開いた。
『これはこれは――そういう筋の方でしたか。こう言っては何ですが、我々の反りが最初から合わなかったのは仕方のないことだったのかも知れませんね』
 闇の向こうで空気が震える。ぐつぐつと笑い声。
『そうさな。本来は俺は喰う側、お前達は喰われる側――だ。女、貴様のししむらを食い千切れなかった事は心残りだが、それはまたいつかの楽しみとしよう』
 轟、と突風が一つ。
 黒い靄が風に散る。美玲が風になぶられた髪をかき上げた時には、すでにルーナライナ軍大佐ビトールの姿は雑居ビルの屋上からかき消えていた。
「行ったか」
「追いますカ?」 
「それこそまさか、だ」
「一応確認ですケド、我々ビトール殿を止めに来たコトデスヨ?」
 己の忠臣の言葉に、若き暴君は鼻を一つだけならした。
「気が変わった。ビトールの奴、頭はともかく腕はそこそこ立つようだからな」
 先ほどビトールが凭れていた手すりに身を乗り出し、劉颯馬は言った。
「七瀬め。『竜殺し』、どこまでやるのか見せて貰おう」
カテゴリー:_小説7話 | タグ:
|コメント(-) |トラックバック(-) | 2015年11月21日 (土)23時17分
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。