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人災派遣のフレイムアップ 第2話 『秋葉原ハウスシッター』 7

「それで、そんなものを引きずってここまで戻ってきたわけ?」
 何か昨日も所長のこんな呆れ顔を見た気がする。 
「……あまり深く突っ込まないでおいてくださると助かります」
 こめかみの辺りを押さえつつ、おれは事務所の冷蔵庫から引っ張り出してきた麦茶を三人分注ぐ。ここまでやってくる間の地下鉄で、美少女フィギュア十三体を背負った男に注がれる視線は痛いというのも生易しいものであった。おれはとっとと直樹のグッズをロッカーに放り込み厳重に扉を閉めた。ところが共に電車に乗ってきた真凛はといえば、意外にもけろりとした表情。
「そんなに恥ずかしいかなあ?」
 などと抜かしている。
「だって。可愛いじゃない?こういうの」
 いや、まあ確かに可愛いといえば可愛いのだろうが。こういうモノをいい年をした男が持ち歩くというのはその、おれの感覚からすると極めて容認しがたい気がする。
「いいんじゃないのかな。自分が好きでお金を払って買ったものなんだから。堂々と持って帰ればいいのに」
「おれが買ったんじゃない!」
 そうだったね、などと真凛はからからと笑った。
 
 余談だが、いわゆるキャラクターグッズを集めたりしたがる感覚は、おれには全く理解が出来ない。物語を読むのは好きだ。そして物語にキャラクターが存在するのは当然だし、マンガやアニメのようなダイレクトに映像が把握できるという利点はすばらしいと思う。だがそれは、あくまでキャラクターと言う物語上の記号を修飾するための存在であるに過ぎないはずだ。個々の物語上に生きる存在が、その物語から分離されてフィギュアやイラストになったとして一体何の価値があるのか。そう思ってしまうのだ。そんな話を直樹にすると、だから貴様は病気なのだ、と言われる。おれから見れば奴のほうがよっぽど病気なのだが。決まって最後には、奴はおれの事を、事象を記号としてしか類別出来ぬつまらぬ奴、と抜かし、おれは奴のことを無意味な抽象物に財を投じる愚か者、と罵り大喧嘩になる。
 ちなみにこんなワケで、おれは絵画や彫刻にもまったく興味が無い。そこにあっても何の役にもたたないものに無理やり意味付けをするというあの感覚が理解できないのだ。機械やソフトウェアの方がよほど製作者の意図、改心の点や力及ばなかった点などを汲み取れるというものだ。……そんな話をするおれが文系で、直樹が理系というのも、世の中奇妙なものではあるが。
「とにかく今回の依頼の件なんですがね」
 おれは麦茶を飲み干した。
「まずは依頼人を見つけださないことには始まらないと思うんですが」
 なにしろ最終的に報酬を払ってくれる人がいないのだ。最悪の場合は事前に支払ってもらっている保証金で補填することになる。それはそれで確かに魅力的なプランではある……が、一応任務達成率百パーセントなんてカンバンを掲げている以上、あんまりあっさり退く訳にはいかない。そんなことをついつい思ってしまう辺りが、経理の桜庭さんに「お若い」と呼ばれる所以だろう。
 しかし、いくら蛇の道は同じ穴の狢で皮算用なウチとは言え、都内で失踪した人間をそうそう簡単に見つけ出す事は出来ないだろう。どうしたものやら。おれは腕を組む。と、
「それに関しては心配ないわ」
 何だかやたら自信たっぷりに所長が言う。あ、なんかイヤーナ予感。
「今日は、羽美ちゃんが来てくれているから」
 その時のおれの表情を音声で表現するなら、げぇっ、だろうか。声は出ずともまさしく声帯はそれを形作っていた。もしかしたら思わず声も出ていたのかも知れないが、それは誰の耳にも届くことは無かった。なぜなら。
「いやぁ亘理氏(うじ)!!息災であったかねッ!」
 事務所の奥の扉が開くとともに、事務所内を圧倒する大音量の怒声が響き渡ったからである。
 振り返れば、そこにマッドサイエンティストが居た。
 うむ。文章で表現すれば一行で過不足無くまとまる。以上解説終わり。
「亘理氏ッ!!あまり最適化されていない脳での思考を周囲に垂れ流すのはよくないッ!」」
 せっかく一行で解説を終了したというのに、そのマッドサイエンティストはつかつかとこちらに歩み寄ってきた。
「亘理氏。嘆かわしきは書き込み不全な貴公の脳。小生はマッドサイエンティストではなく純朴な一学徒に過ぎぬと常日頃指摘しているだろう。二十三度目の指摘なのだから、いかに分裂頻度が下り坂にある貴公の脳神経でもそろそろシナプスをつないでは貰えんかねッ」
「何としたことか、歩み寄りつつそのマッドサイエンティストは、こちらの思考を読んだかのごとく奇態な台詞を吐き散らしながらなおも近づいてくる」
「さっきから台詞がもれてるよ、陽司」
「ぬはぁしまった」
 冗談はさておいて。
「いやあ羽美さん。相変わらずトばしてますねえ」
「うむッ。夏は良い。成層圏からの電波を受信しやすいからなッ」
 さいですか。
 この御人の名前は、石動(いするぎ)羽美(うみ)さんという。ここまで来れば想像はついていると思うが、彼女もおれ達『人材派遣会社フレイムアップ』のメンバーの一人だ。以前どこかで話したことがあるかも知れないが、おれ達が仕事で使うしょーもない小道具の発明と、主に電子面での情報収集、技術的なバックアップを主な役割としている。おれがいつも胡乱なアプリや音楽を詰めて持ち歩いている違法改造携帯『アル話ルド君』も彼女の手によるものだ。現在はうちの事務所に事実上就職しているが、それ以前は(よくは知らないが)アメリカの某工科大学でもちょっとは名の知れた俊英だったのだとか。
 年のころは所長と同年か若干上ではないだろうか。伸ばし放題のぼさぼさの髪。どこのメーカーのものかわからない怪しげな瓶底眼鏡を、まるで戦場に向かうハイテク兵士のゴーグルのようにがっつり装備しているその風貌だけでも十二分に怪しげだ。いかにも学者、と全身で主張するかのごとき白衣を着込んではいる。だが、地面にまで届く長い裾をずるずると引きずっているせいで、すでに下半分は白衣なのか茶衣なのか判別不能になっている。ちなみにうちの女性陣の中ではもっとも長身だったりする。ひょっとしたら直樹に匹敵するような脚長外人体型なのではないだろうか。いつも白衣に包まれている上、PCの前に座っているときは常に妖しい笑みを浮かべつつ猫背、反面、歩くときは無意味に笑いながらそっくりかえっているので今ひとつ判断がつけがたいのだが……。
「時に亘理氏ッ。困っているそうだなッ」
「イヤ別ニ困ッテイマセンヨ」
「遠慮せずとも良いッ。安心せよ。科学が無知蒙昧な徒を差別したのは十九世紀までだッ」
 あんまり根拠の無い発言をしないで欲しいなあ。とはいえ、このままではあまりにも話が進まないので、おれは今までの状況を羽美さんに話してのけた。
「そういうわけでね。ここは羽美ちゃん頼みってわけなのよ」
「石動さん。お願いします」
 さりげなくテーブルの下で真凛がおれを小突く。ヘイヘイ。ワカリマシタヨ。
「ああ、神様仏様石動大明神様っ。この卑小な知識しか持たぬ哀れな凡俗をその偉大な叡智でお救いください~」
 あまりにも見え透いたおだてにいくら何でも怒るかと思ったものだが。
「ふむぅ。ふむぅ!ふむぅ!!人探しとな!容易いッ!!小生に任せておきタマエッ!」
 この辺り、いかに知能指数が高かろうが、うちの事務所の構成メンバーたる資格は充分だと、おれは思う。
カテゴリー:_小説2話 | タグ:
|コメント(-) |トラックバック(-) | 2015年10月17日 (土)10時35分
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