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人災派遣のフレイムアップ 第1話 『副都心スニーカー』 11

 飛び交う銃弾をかいくぐり、滑り込むように地面すれすれに放たれた真凛の回し蹴りがスケアクロウの腓腹《ふくらはぎ》を捕らえる。
「くっ!」
 だが、その声は真凛のものだった。足払いとしての威力は充分だったのだろうが、鋼の体の防御力とその足自体の重量が相まって、姿勢を崩すには到らない。攻守一転、振り下ろされる銃身を、まるでストリート系のダンサーのように回転、跳躍してかわす。しかしそれで終わりではない。右腕が振り下ろされると同時に、左腕の銃身がすでに真凛に向けられている。浮かび上がる『線』を咄嗟に身を捻って避ける。と、その一瞬後に空間をフルオートの掃射が走り抜けてゆく。間合いを離して再度仕切りなおし。真凛は大きく一つ、呼気を吐き出す。一撃離脱を繰り返すこと十数度。未だ目の前の鋼の塊には有効打を与えきれてない。
「まいったなあ。いくら弾道が見えるって言っても、これじゃ手詰まりだよ……」
 真凛の視界に銃口が移ったその時、彼女の脳裏に浮かぶ映像には、敵の銃器が形作る射線が、まさしく『光の線』となって描きこまれる。そして銃弾が放たれる前にこの『線』から身を外していれば、決して弾丸に当たることはない。五体を武器として戦う彼女が銃器に対抗できるのは、この銃弾を見切る能力があればこそである。それは決して超能力の類ではない。銃相手の戦闘で重要な要素は、銃口の角度と距離、銃と込められた弾丸によって決まる初速と弾道のバラツキ、敵の挙動から推定される狙撃ポイント、そして発射のタイミングである。真凛はそれを五感で捕らえつつ、そこから弾道を予測しているに過ぎない。だが、その過程を極限まで高速化した結果、予測は無意識の世界で行われ、その結果のみが『線』という情報の形で意識野に出力されているのだ。かつて一握りの武道の達人がたどり着いたという境地。だが彼女、七瀬真凛の流派では、最初からこれを目標として鍛錬する。それでこそ現代における武術である、とは七瀬の当主の弁だとか。
「全くタフなレイディデス……!ワタシの銃弾をコウモカイクぐってくれるトワ」
 スケアクロウは余裕ぶった発言をしようとしたが、端々に登る苛立ちがそれを裏切っている。接近戦型と見て、初弾でカタをつけようと放った最大火力の一撃をかわされ、あまつさえこうまでいいように一方的に打撃を叩き込まれているのだからそれも当然か。相手は生身、そして機動力が命だ。一発銃弾なり銃身の打撃が当たってしまえば自分の勝ちだと言うのに、その一発をどうしても当てることが出来ない。すでに初回のナパームによる炎は、スプリンクラーの散布もあり収まりつつある。まとわりつく水蒸気の中、恐らくスケアクロウの心中を占めるのは焦燥感だったろう。おれ達『フレイムアップ』が乗り出してくるからこそ、セキュリティをオフにしてこの正面からの戦いに持ち込んだのだ。このまま失敗でもすれば減俸どころか懲戒モノのはずだ。何としてもココでコイツを仕留める――そう決意したのか、義手のギミックが駆動し、新たな弾丸が装填される。その目に宿る光の色が、『当たり所が悪かったら死ぬかも』から、『当たり所がよければ生き残るかも』へと、わずかに、だが決定的な変化を見せ――
「ゲームセットでスヨ!!」
 スケアクロウの両腕が突き出される。弾種は……ナパーム!真凛の脳裏で、予測された『帯』が空間を切り裂く。その線に己の身を添わせるようにギリギリまで引き付けながら突進。己のわずか数センチ先の空間を炎の塊が抉り取り、大気が容赦なく振動となって皮膚に叩き付けられる。ここまでは先ほどまでの展開の焼き直しだ。後方の爆発をよそに疾走。みるみる距離が詰まり、一足一刀の間合いを突破。突き出された銃身を潜り、その肘を掌で捌いた。近接戦の間合い。敵は両腕の武器を使い切った。――ここで、真凛は仕留めにかかった。必勝を期し、さらに一歩踏み込み、その脇を抜け跳躍。狙いは頭部。よもやここまで機械化されてはいまい。延髄に向けて研ぎ澄まされた手刀を振りぬこうとした、その時。スケアクロウと目が合う。そこに宿るは……改心の笑み!真凛の視界が突如危険な色で染まる。奴が想定するのは……『線』ではなく、巨大な『球』の攻撃。まさか。
「あぐっ……!!」
 人間離れした反射神経で咄嗟に急所を庇ったものの、スケアクロウから迸った『何か』は容赦なく真凛の体を貫いた。たまらず着地、後退する。
「ヤレヤレ……。コンナ裏技マデ使ワセテクレルトハ」
 じゃきん、と9mmを装填する金属音。銃口が真凛をまっすぐ見つめていた。対衝撃システム。精密機械を体内に埋め込む彼らにとって、時として、堅牢な装甲に受ける着弾や爆発のダメージよりも、その衝撃による内部の精密部品の損傷が深刻となる時がある。このシステムはそのような損傷を回避するため、衝撃を受ける際に自分からも小さな衝撃波を発生させて相殺させるという、一種の防御装置である。先ほどの一瞬、奴はこれを限界を超えた出力で稼動させ、真凛を叩き落としたのだ。こんなことをすれば奴自身もただでは済まないが、生身の真凛の被害はそれを遥かに上回る。
「か、はっ……」
 敢えて言うなら、巨大なスピーカーから至近距離で重低音を浴びた衝撃。あるいは車に乗っていて急停車したときに感じる圧迫感。それらの数倍のものを体内に叩き込まれたようなものだろうか。それでも転倒しないあたりはこの娘の積み上げてきた研鑚の賜物だった。だが、結局は立っているだけということだ。これでは先ほどの華麗な回避など望むべくもない。
「ちぇ……。この業界に強い人は多いって聞いてたけど。これからはこういう武器のことも考えておかなきゃならないのかな」
 必死に呼吸を整えてはいるが、その両足は思うように動かないということがありありとわかる。
「貴方に次ハアリマセン……」
 視線が交錯する。銃身から無数の弾丸が撃ち出された。
 
 銃弾が無数の弾痕を穿つ――天井に。
「なっ……」
 スケアクロウが驚愕の叫びを上げる。真凛を捕らえたのは最初の一発のみ。後はまるで素人がオートマチックを撃ったかのように、反動で上に跳ね上がってしまったのだ。
「いったあ~~。覚悟したとはいえ、やっぱりそう何発も食らうものじゃないなあ」
 肩を押さえて真凛がうめく。気をめぐらして防御し、インナー越しに受け止めたものの、拳銃弾を叩き込まれれば無傷のはずがない。だがそんな声もスケアクロウには届いていなかった。己の右腕が、その強さの拠り所となるはずの右腕が、無様にもげて地面に転がっていたのだから。
「右でツイてた。左だったらまだ『壊して』なかったもんね」
 真凛が掌を開くと、硬い音がして、幾つかの金属部品と樹脂で出来た肉片が地面にこぼれ落ちた。それはまさしく、スケアクロウの肘を構成していたパーツだった。
「まだこっちは名乗ってなかったよね。人材派遣フレイムアップアシスタント。『殺捉者《さっそくしゃ》』七瀬真凛」
 
 『七瀬式殺捉術』。それが真凛の実家に伝わる武術の名称である。戦国時代に端を発して江戸、明治の時代を経て醸成された日本の古武術の一派。その特徴は徹底した実戦主義にある。戦国時代での戦闘においての格闘技とは、あくまでも武器を失った時のものであり、そこに展開されるのは相手を傷つけて戦闘不能にする殴り合いや蹴りあいよりも、早々と地面に引き倒した方が勝ち、という戦い、いわゆる取っ組み合いである。確かにこの思想から、投げ技や関節技、急所への当て身を根幹とする古流の柔術が日本各地で発生した。だが、七瀬流の開祖はどうやら思い切った考えの転換を行ったようだ。
 おおよその投げの開始となり、乱戦でもっとも多い「取っ組み合い」そのものを攻撃とする。一度相手の体をつかめばそこがどこであろうと握り潰し、砕き、引き千切ってしまえばいい。「捉えれば即ち殺す」、殺捉術の思想である。その要諦は強力な握力と、触れた構造の脆いポイントを一瞬のうちに探り出す繊細な指先の感覚にあるというが、そこらへんは門外不出の秘伝なのだそうだ。
 たしかに原始的だが、それだけに応用範囲は広い。押え込まれても指一本相手に触れる事が出来ればそこから身体を抉る事が出来るし、先ほどのように敵の攻撃を捌きつつ関節を破砕する、などという荒業も可能だ。以上はすべて、当人からの受け売りだから、どこまで本当かはわからないが、実力の方はごらんの通り。
 真凛が正統後継者として伝承した古武術とは、この凶悪極まりない戦闘技術である。聞くところによれば、家系の中でも特に秀でた才能だとかで、中学生時分において既に免許皆伝。後のストリートファイトはより実戦向けの調整を兼ねていたそうである。ちなみに、世の中には愚かというか無謀というか、とにかく哀れな人間がいるもので、かつて彼女の同級生が電車で痴漢被害に遭ったそうな。その娘に相談された真凛はその痴漢の……つまり、あれを……引きちぎったとかちぎらないとか。あくまで噂だけど。少なくとも、真凛が女子高の同級生にやたらとモテることは事実である。こんな物騒な娘がアシスタントについている、ってだけでも、おれって同情してもらう価値が十分にあると思うんだけどなぁ。
 
 既に破壊されていた腕は銃弾の反動に耐え切れず、ちぎれて落ちた。
「……っ」
 間髪いれず左腕で攻撃態勢を取ったのは賞賛に値する。だが今度は真凛の方が早かった。ふらつく足に活を入れ懐に飛び込み、すくいあげるようにその左腕を押さえている。けたたましい金属音が鳴り響き、火花と共に今度は左腕が千切れ飛んだ。
「本当に強かった。スケアクロウ。あなた達みたいな強い人と、もっともっと戦いたい」
 降り注ぐ金属部品の雨を抜け、そのまま後背に回り込む。衝撃波は、……もう間に合わない。スケアクロウが、観念の呟きを漏らした。
「……オミゴト。ヤングヤマトナデシコ」
 真凛の指が、スケアクロウの背骨に伸び触れる。まるで繊細な場所を愛撫するかのようにつ、とその掌が僅かにその表面をなぞり、瞬く間に構造を看破する。
「『胡桃割《くるみわり》』」
 ごぎん、とイヤな音がして、スケアクロウの人造の脊髄は握りつぶされた。下半身への情報伝達機能を失った鋼の体が、重い音と共に倒れこんだ。
カテゴリー:_小説1話 | タグ:
|コメント(-) |トラックバック(-) | 2015年09月29日 (火)00時56分
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