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人災派遣のフレイムアップ 第1話 『副都心スニーカー』 9

 結論から言ってしまえば、だ。
 
 世の中は生真面目な方々が考えるよりは遥かにいい加減に出来ているし、夢見がちな方々が想像するよりは遥かに味も素っ気もありゃしない、ということになる。
 機械化人間。超人的な戦闘力を持つ武術家。魔法使い。陰陽師。超能力者。吸血鬼。狼男。一人で一部隊を壊滅させるような凄腕の傭兵。特A級ハッカー。天才ドライバー。マッド・サイエンティスト。およそアクション系、ファンタジー系、伝奇系のコミックやら小説やらを見れば、まずこの中のどれか一つくらいは混じっているだろう。で、こういう連中が現実に存在するか、と問われれば、実は割とホイホイ実在してたりする。それも結構な割合で。
 では、そういった連中、一般人とは質、あるいはレベルが異なるひとびと、すなわち『異能力者』達にはすべて、愛憎交差する復讐劇の主人公や、あるいは冷酷無比の悪役、世界を支配する野望に燃えた黒幕、あるいは滅び行く世界の救世主といった役割が与えられるのか?と問われれば、答えは明確に”否”である。
 文明が未熟だった頃はいざ知らず、科学と情報が発達した現代においては、個人に備わる異能力が周囲にもたらす影響は恐ろしく小さい。例えば物理的な戦闘では、人狼や吸血鬼が如何に戦闘に秀でており、ヤクザや不良を容易に叩きのめす事は出来るといっても、武装した軍隊を正面きって相手に出来るほど強くは無い。空を飛べることは出来ても飛行機にはかなわない。力が強くても重機には及ばない。
 スーパーハッカーやドライバー、武道家はあくまでも人間の限界であり、それ以上ではないのだ。機械化人間やマッドサイエンティストも同義。彼らは現代文明の先端、もしくは異質なベクトルではあっても、決してそのカテゴリーを逸脱することは無い。
 そして呪術や魔術、陰陽術。これらはもともと人類の歴史と裏表の関係にあり、『一般に理解されてはいないが、知っているべき人はちゃんと知っている』ものに過ぎない。術法で出来ることは、大概が現代科学でもっと効率よく実現することが可能なのだ。実在しないとされるからこそ、世間様は魔術や呪術に憧れと畏れを抱くのである。実在を知り、その効能と限界を弁えている人間にとっては――実際のところ、長い時間をかけて修得するほど魅力のあるトピックスではないのだ。たとえば『時速百キロで移動する魔法』があるとしても、それを身につけるための修行期間や、儀式を行うための手間暇コストを考えれば、普通車の免許を取って中古車でも買った方が遥かに効率良く確実なのである。
 
 これらを総合すれば、こうなる。
『異能力者は珍しくはあっても、さして貴重ではない』
 彼らの存在は一般人にはあまり知られてない。出会えば珍しいし、個別には憧れや嫉妬を抱かれる存在ではある。だが、彼らの能力のほとんどは、設備、資金、時間さえあれば充分に代替可能であり、社会的に大して影響を持ってはいないのだ。まれに世界征服の野望に燃える吸血鬼や選民主義を掲げる超能力者など、ベンチャー魂に燃えるカリスマが現れることもあるが、大概が一般世界の権力者達に潰されて終わってしまっている。特殊な人間が内包する百の力は、一の力を持つ凡人一万人が百年かけて積み上げた文明には決して打ち勝つことは出来ない、ということ。
 こうなってしまうと異能力者達の立場というのは非常に微妙なものとなってしまう。彼らは一般社会から逸脱した存在でありながら、そこから独立して己の世界を築けるほど強力ではないのだ。かつて彼らが小さな社会で絶大な影響力を持つことが出来た神話と迷信の時代が終わり、中世あたりになるとこの流れは顕著になり、多くの異能力者は己の居場所を追い出され、あるいは見つける事に苦慮することとなった。
 だが、それが近代を経て現代に到ると、彼らにも、そして一般社会にも変化が訪れる。両者をつなぐ受け皿の登場である。
 居場所の無い異能力者に仕事と生活基盤を与える。そして社会に対しては、『設備や資金、時間が充分ではない』状況で発生する難問を解決するための切り札を提供する。それはかつては魔術師達の秘密結社、あるいは邪悪な同朋を討つ吸血鬼達の連盟、正義の超能力戦士グループだったそうだが、二十一世紀に入っての現在は、より包括的に様々な異能力者を取りまとめる組織へと統合されつつある。それがおれ達『フレイムアップ』や、あのスケアクロウが所属する『シグマ』のような『人材派遣会社』なのだ。
 企業間に起こる表立たないいさかいや、突発的に発生する災害、本人の強い希望により隠密に処理すべき案件。そういった依頼を、おおむね高額な料金で各所から派遣会社が請け負い、所属する異能力者を『派遣社員』として差し向ける。そして異能力者は己の能力を存分に振るって案件を解決し、報酬を得る事が出来るのである。すでにこのスタイルは現代の経済の暗部にしっかと組み込まれており、各種トラブルにおける『切り札』として定着してさえいるのだ。
 そして、対立する両者が同時にこの切り札を用いた場合に発生するのが、今おれ達が繰り広げているような異能力者達による前近代的な戦闘なのである。
 おれ達『人材派遣会社フレイムアップ』はこの派遣業界の中でももっとも零細の部類に類別される。構成員は多少流動しているが十人程度、しかもその大半がおれみたいなアルバイト員だったりする。大手派遣会社が数十~数百の異能力者を抱えていることを考えれば、その規模が伺い知れるというものである。ところが、どういうわけか『業界』内ではうちらは有名なのだ。任務達成率100%というのは嘘ではないし、ちょっとアレなメンバーが多いことも相まって、今ではすっかり『人災派遣会社』という異名のほうが通りが良くなってしまっている。
 いやはや、ロクでもない同僚がたくさんいると、おれみたいな常識人は苦労するんですよ、ホント。
 
 おれは振り返らずに壁沿いを走りぬく。もう少しで大扉にたどり着く、そう思った刹那。おれは思いっきり横っ面を張られ、無様に壁に叩きつけられていた。
「な、何だよ?」
 よろめきながら立ち上がる。見るとそこには、愛らしい瞳でこちらを見上げる熊のぬいぐるみが一匹、ちょこなんと地面に座っておられた。まさか、と思ったのもつかの間、視界が急速に沈む。後ろから足を払われたのだ、と気付いた時には地面に大の字になっていた。振り向くと、そこには何たらいうアニメに出てくる愛らしい小動物のぬいぐるみがこちらを無邪気そうに見つめている。本能的な危険を感じて咄嗟に横転すると、ずどん、と鈍い音が一つ。今までおれの頭があった空間に、ボーリングの14オンス玉が直撃していた。一瞬反応が遅れれば、今頃潰れた饅頭のようにあん《・・》をぶちまけているところである。見上げれば空箱の上に陣取る黒猫の人形が二匹。おれは跳ね起き、壁を背にして構えた。くすくす、とどこかから笑い声が聞こえたような気がした。
 ……いや、それは錯覚だ。なぜなら、金庫室の各所、積み上げられた機材や空箱の向こう側から無数に姿を表した小さなモノたちの正体は、先ほどの熊のぬいぐるみ、UFOキャッチャーの景品、ゲームのマスコット人形など、命ないモノたちだったからである。それがまるで意志のあるようにおれを一斉に見つめ、こちらを取り囲んでいた。
「一階のアミューズメントフロアの景品、だよな……」
 おれは恐る恐る一歩を踏み出す。と、ぬいぐるみの群れがまるで堰を切ったかのように襲い掛かってきた。先ほどの熊が高々と二メートル近く跳躍し(!)愛らしい脚でおれの顔面に回し蹴りを叩き込む。その途端、質量を無視した凄まじい打撃がブロックしたおれの腕に弾けた。とっさに顔面はかばったものの、今度は足首に鈍い痛み。見ればデフォルメされたワニのぬいぐるみが、がっちりとおれの踝をくわえ込んでいる。
「このっ……」
 手と足を無闇にぶん回し、熊とワニを振り払う。質量で言えばしょせんはぬいぐるみなのか、あっさりと吹っ飛んでいった。だが、地面に転がりすぐさま起き上がったその様を見るととてもダメージを受けたようには思えない。続けて休む間もなく飛び掛ってくる他のぬいぐるみを手で足で叩き落すが、これでは所詮気休めにしかならない。あっという間に背中に一撃痛打をもらい、そのままガードが崩れたところを一気に無数のぬいぐるみに押し切られて転倒した。
「痛て!痛て!痛ててぇ!」
 降り注いでくる打撃の雨を亀になって耐える。昔、新宿の飲み屋で美人のお姉さんといい雰囲気になったあと、裏道で彼氏だというアレな人にボコボコにされた記憶を思い出した。
 ちっ。
 おれは亀の体勢から大扉を見やる。距離としてはあと五メートルもないというのに、とてつもなく遠く感じる。おれを円を描くように取り囲んでいるぬいぐるみども。……こういう時、セオリーから行けば。
「そこだっ!」
 おれは二、三発貰うことを覚悟で跳ね起き、バッグを人形の群れの向こう、丁度こちらを見下ろせる位置にある高さのダンボールに向けて思いっきり放り投げた。各種の機材を詰めたバッグはそれなりの重量を有し、壁際に積まれていたダンボールの山を突き崩した。ダンボールの奥に潜んでいた人影は、おれの攻撃に怯んだ様子もなく、こちらを見て、ふふふ、とステキな微笑を浮かべてみせた。
カテゴリー:_小説1話 | タグ:
|コメント(-) |トラックバック(-) | 2015年09月27日 (日)21時47分
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