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人災派遣のフレイムアップ 第1話 『副都心スニーカー』 6

 水が流れる音がどろどろと暗闇の奥から鳴り響き、おれの足元を人工の川が流れてゆく。下水道という言葉から予想していたよりは、悪臭や汚水も遥かに少なかった。かつては生活排水が注がれていたのだが、再開発に伴い新規に下水網が整備された結果、今ではそのほとんどは遠くから流れ流れてきた雨水なのだという。
 ――ここは臨海副都心の地下に広がる下水道の一つ。地中を貫く分厚いコンクリートの円柱の中、横合いに穿たれた穴から注がれた下水が合流し一本の川となり、下り坂になっている円の底をゆるやかに滑り落ちてゆく。直径五メートル以上もある管に対して水位は三十センチ程度のため、おれ達は下水を避けて歩いてゆくことが出来た。靴音が響き渡り、ここが地下であることを否応無しに思い知らされる。
 おれはバンから持ち出してきた七ツ道具、強力ペンライトのアマ照ラス君(そういうネーミングなんだ、おれがつけたんじゃない)を掲げて奥へ奥へと慎重に進んでゆく。
「うう、こんなことなら一回事務所で着替えてくればよかった」
 その後ろから同じくアマ照ラス君を掲げてついて来るのが真凛。おれの行動選択肢が気に入らなかったのか、ひたすらさっきから愚痴っている。トンネル内に反響して愚痴が倍増しになる。
「なんだよ、ちゃんとインナーは着込んであるんだろ?」
「そういう問題じゃないよ!ボク制服着てるんだよ!?」
 じゃあ機関銃でも持たせておけばよかったかねえ。いや、ブレザーではアカンか。おれはこいつの愚痴を無視することにした。だいたいおれより先に呼び出されていたくせにロクに着替えてないというのは如何なものか。ちなみにおれはといえば暑さに耐えつつ長袖を着込んできた。おれ達スタッフは任務中は、最低限調査に支障なく活動しやすい服装を心がけるものである。幸か不幸か分厚い地面は夏の日光を遮断し、むしろ地下は涼しいくらいなのだが。
「だって、ジャケット着て戦うものだと思ってたし」
「あのねえ真凛。おまえうちの仕事を押込強盗か対テロ鎮圧部隊かなんかだと思ってるだろ」
 図星だったらしく真凛は沈黙した。おれはやれやれと頭を振る。
「今回は金型を取り返せばいいんだからドンパチは無用。こっそり潜って、こっそり取ってくりゃそれでいいの」
 だからこそこうして、地上の喧騒に背を向けて明かりも差さない下水道に侵入などしているのだ。
 
 あれから事務所に連絡を入れてみたら、うちの電子部門担当である羽美《うみ》さんにつながった。どうやら豚のジョナサン君の件は科学よりも腕力がモノを言う段階に移行したため、ヒマになったから帰ってきたということらしい。これ幸いと、『下水処理施設』をキーワードに調査してもらったところ、驚くほどあっさり情報が手に入った。
 建てては壊し、壊しては建て。大都会のコンクリートジャングルは変化が早く、最新の地図の作成は容易ではない。まして地上と異なり、数メートル先に通路があっても見ることが出来ない地下世界となれば尚更のことだ。地下鉄のトンネル、ビルの地階フロア、各種公共施設の埋設ケーブル、下水道、緊急避難通路……。都会の地下にはまさしく迷宮じみた世界が広がっているのだ。中には、官公庁でさえ存在を把握していない戦前の古い地下施設もあると聞く。立体的に無数の構造物が組み合わさった地下世界の完全な地図を把握している人間は、おそらくこの世にいないだろう。羽美さんがネットで集めた、無数の公式非公式のデータを丁寧に重ね合わせていった結果、下水処理施設へとつながる下水道の一本が、ザラスビルの地下施設の極めて近くを通っていた、ということがわかったのである。
「まだ埋められてなければ、だけどな」
 近所の公園に埋設された貯水施設のマンホールから潜入し、問題の下水道まで進む。バイトを始めた時に不幸にも仕込まれた基礎研修が、解錠やら警報をごまかすのに役に立った。羽美さんが即席で作ってくれたCADデータを、事務所から支給された違法改造多機能携帯『アル話ルド君』にダウンロードしてあるので、まず道に迷うことは無いはずだ。ここからザラスビルの地下施設に接近し、メンテ用の共同溝を経由して潜入するというのが、おれ達の即席のプランだった。とりあえずは今のところ、順調に歩を進めている。
「ううう、明日学校なのに。臭いついたらどうしよう……」
 ここまで来てまだ諦めの悪いヤツ。
「なんならここで脱いでいってもいいぞ」
「絶対やだ」
 わがままなヤツめ。だがどうやらそれで吹っ切ったのか、真凛も愚痴るのは止めておれについて進み始めた。しばらくは、緩やかな下り坂となっている下水管を奥へ奥へと進む無機質な時間が過ぎる。下水管は終点でより大きな下水管に連結しており、水を避けてそちらに飛び降り、さらに下ってゆく。そんなことを幾つか繰り返してゆくうちに、水を避けて端を歩いていたはずの下水管は、いつしか二人がしっかり並んで歩けるほどに広くなっていた。と、『アル話ルド君』がアラームを鳴らす。おれはなおも歩き続けようとする真凛の肩をつかんで引き止めた。
「どうしたの?」
 そこでおれの表情を見て、真凛も言葉を仕舞う。ここからはお仕事モードだ。
「壁の脇、脛の高さと胸の高さに、乾電池で動くタイプの簡易センサーがある。鼠や虫には反応せず、かつ人間は歩いていても伏せていても引っかかる、実用的な仕掛け方だな」
 バッグに放り込んである七つ道具の一つ、羽美さん作成の携帯連携型万能センサー『ル見エール夫人』の威力は覿面だ。
「解除できるの?」
「やってみましょ」
 バッグから百円ショップで買ったドライバーセットを取り出し、おれは脳裏に仕舞いこんだマニュアルをもとにちょっとした日曜工作をするハメになった。常に発しつづける信号を殺さず、なんとかセンサーのみを無力化する事に成功した。
「ねえ、こんなものが仕掛けてあるって事は」
「ま、ただの下水道な訳はないわな」
 おれ達は角を無事に曲がってさらに進む。だが三十メートルほど歩き、いよいよ下水道とザラス地下施設がニアミスするポイントに出る、というところで、またしてもアラームが鳴り響く。携帯に表示されたコメントいわく、
「他に同様のセンサーが十数個」
「ほんと!?」
 残念ながら本当。警告メッセージは続く。
「ついでにもうひとつ言うと、人間大の熱源反応がいくつかある、ってさ」
「ということは、ひょっとして……」
 頷いて、おれは一つ深々とため息をつく。ドライバーセット出すのヤメ。
「バレバレ、ってことなんだろう?」
 下水道の奥に投げかけた声は、幸か不幸か無視されることなく回答を得ることが出来た。
 
「やアやア、ヨく来て下さいマシタ」
 ペンライトの向こうで佇んでいたのは、間違いなくさっきゲームセンターで見かけた、あのアングロサクソン系大男だった。そしてその口から滑り出たのは、深夜の通販番組で、健康器具をセールスする外国人の台詞にアテレコされる類の、野太く軽薄な日本語だった。翻訳不要で便利なことである。服装は、昼の店員服とは打って変わって、バリバリの戦闘用迷彩服。
「こんナ遠いトコロまで良く来テクダサイましタ、ジャパンノ災害会社」
 男はサングラスをかけたまま、ニヤニヤと挑発的な笑みを浮かべて腕組みをしている。
「へぇ。いつのまにかウチの評判も海を越えたってコトかな?」
 おれはのんびりとバッグに小道具類を仕舞いこむ。
「外資系って割には意外とサービス熱心なんだな。こんな敷地外まで警備の出張サービスかよ?」
「ノーノー。アナタはミステイク。ココはザラスのエリアでース」
「って……どういうこと?」
 大男の胡散臭さに飲まれていた真凛が、ようやく我に返る。
「オウ、ステキなジャパニーズレディ。ジェイ・エイチ・エスの生徒がコンナ下水に制服を着てくる、コレはとても良クナイことデス」
「あ、いえその。お気遣いどうも」
 真凛がバカ丁寧にお辞儀をする。ジェイ・エイチ・エスが中学校《ジュニアハイスクール》の略だと教えてやるべきかかなり迷ったが、とりあえずおれは話を進めることにした。
「嫌な造りだとは思っていたけどね。秘密の通路なんてむしろスパイごっこの世界じゃないか?」
 おれは男の奥の壁へ『アマ照ラス君』の焦点を合わせる。LEDの強力な光は、バッチリとそこに穿たれた本来あるはずのない扉を照らし出した。
「GREAT。ボーイは飲み込みが早くて助かリマス」
 このビルは上階のザラス中枢部、下層のショッピングエリアに分かれており、上階から中枢エレベーターを通って地下駐車場に抜けられる構造となっている。だが、駐車場だけではなく、設計図にも載らないさらなる脱出路があったということだ。そりゃ警備が厳重で当然である。おれ達は裏をかいて潜入するつもりで、大本命を引いてしまったことになる。
「後ろ暗いとは思ってたけどな。大方普段は脱出口じゃなく、地下金庫へろくでもないモンの搬入にも使ってます、ってトコロかね?」
「OH!ウチのクライあントハ健全な企業体ネ。ザラスの取引に後ろ暗イモノガ在るトデーモ?」
「新作フィギュアの金型とか、どうだろね?」
 男の雰囲気がわずかに変わった。組んでいた腕を解く。
「地上フロアは通常のセキュリティに任せておいて、裏はアンタが警備する、って手筈かい」
 おれは半歩足を引き、やや半身になる。
「ノーノーノー。ジャスタリトゥディッフェレン《少し違います》」
 男は大げさに肩をすくめる。
「表から侵入したらドロボーさん。ドロボーさん現行犯で捕まえたらポリスに引き渡すのがセキュリティのオシゴトです。でも、存在しテはいけない裏口から侵入するドロボーさんは、やっぱり存在しテはイケマセン。よって、存在をナクシテシマウベキ。それがワタクシのオシゴト」
「はあ。ちなみに存在しちゃいけない泥棒ってのは」
「ヤングジャップとヤングヤマトナデシコ。実にオ痛まシイ」
 ジャップとヤマトナデシコという使い分けは正しいのだろうか。
「あいにくと、荒事は得意ではありませんので」
「そレは奇遇、ワタシモソウデース」
 男は肩をすくめたまま、一つ指を打ち鳴らした。
「ダカラ、忠実ナ部下に任せるとしまース」
 音とともにどこかでブレーカーが上がり、通路を光が満たす。合わせてずどどどどどど、と足音も控えめに進んで参りますは、通路の奥に控えていらしたコワモテの警備員さん約十名。手にはいずれも、ものごっつい警棒《バトン》。こりゃやっぱり、おれ達を捕まえてキリキリ背後関係を吐かせようとかそんなとこかね。
「曲者ダ!ヤッヂマイナァーー!!」
 そんなとこだけ変な風に日本語を覚えなくていいって。まるで時代劇のヤクザさんのように迫りくる警備員達を見て、おれはゲンナリした。
カテゴリー:_小説1話 | タグ:
|コメント(-) |トラックバック(-) | 2015年09月25日 (金)00時20分
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